番組内容
味の加減を調節する時に使ったりする「塩梅(あんばい)」という言葉があります。一般的に使われると、広い意味があって様々な捉え方ができ、それが大人の知恵じゃないかなと思うんです。私は「在宅ホスピスケア」を甲府市で30年近く実践しています。ある高齢男性が食道がんと診断され、介護保険サービスを受けることになりました。すると関係者が定期的に集まって「命をどう支えるか」という会議が開かれます。その時の話です。

番組内容2
がんの症状が出たら辛くないようにしっかり対処するけれど、まずはそれまでの暮らしをどう支えるのか話し合いました。男性は本当に耳が遠かったので、「聞こえてないだろう」と思っていましたが、会議が終わる頃になったら、目から一筋涙がツーって流れたんです。看護師が涙をふいて「大丈夫?」と聞いたら、ちっちゃな声で「いいあんべえでおねげえしやす(いい塩梅でお願いします)」って言ったの。すごい言葉だと思いませんか?

番組内容3
どんなこともパーフェクトっていうのはない。でも、いろんな職種の人が集まって、自分のために話し合ってくれる。それをありがたいって多分お思いになって。しかも「いい塩梅で」です。「100%でなくていいから、ぜひ『のりしろ』のあるみんなが救われる方法で考えてください」と本人が言ったんですよ。私たちはみんなで「頑張ろうね」って約束しました。その時、私の胸の中に、「いい塩梅」って言葉がストンって落ちたんです。

出演者
【講師】
内藤いづみ(在宅ホスピス医)　

【司会】
北村花絵(テレビ静岡アナウンサー)　

【手話通訳】
石川ありす